かつて自動車を運転する際は、紙の地図を見て「今どこを走っているか」「道はあっているか?」を確認しながら進んでいました。しかし今では、カーナビが自分の位置とルートをリアルタイムで教えてくれて、その通りに運転すれば迷わず目的地に到着できるようになりました。建設機械も、同じような進化を遂げています。
従来の施工では、作業員が紙の図面を確認しながら「丁張(ちょうはり)」を設置し、それを基準に作業を進めていました。一方、現在のICT施工では、建設機械にGPS衛星位置情報などを受信するアンテナや姿勢センサーを搭載することで、建設機械自身の位置や姿勢をリアルタイムに把握できるようになっており、少ない段取りで、多くの経験なしに、設計図通りに施工できるようになってきています。このような技術を活用する建設機械を「ICT建機」と言います。
ICT建機は、GNSSアンテナ(GPS衛星位置情報などを受信)で位置を把握し、バケットやブレードの傾きをIMUセンサー(姿勢センサー)で検知し、バケットやブレードの傾きを検知し、モニター画面に3次元設計図と現在位置を表示することで、オペレーターが「今どこを施工しているのか」「どこを施工すべきか」を視覚的に確認しながら作業できるようになっています。
ICT建機の構成
ICT建機の構成
※Smart Construction 3D Machine Guidanceの構成
ICT建機は、大きく「マシンガイダンス(MG)」と「マシンコントロール(MC)」の2つのタイプに分けられます。
マシンガイダンス(MG)
マシンガイダンス(MG)
建設機械の刃先位置と目標形状をモニターに表示します。オペレーターは、モニターを確認しながら操作を行い、刃先を目標形状どおりの位置に合わせて施工することができます。
マシンコントロール(MC)
マシンコントロール(MC)
建設機械の刃先位置と目標形状をモニターに表示し、その形状に沿ってブームやアームを自動制御します。設定した目標より深く掘ろうとすると自動で停止するため、誰でも効率的かつ正確に施工できます。
ICT建機は、刃先の位置や目標形状がリアルタイムで見えるため、正確な施工を行うための段取り(丁張や墨出しなど)を減らすことができます。これによりさまざまなメリットが生まれ、現場の生産性・省人化・安全性向上に大きく貢献しています。
マシンコントロール(MC)
生産性向上
BEFORE
従来の施工では、丁張や墨出しに加え、ズレや過掘りを確認するために、手元作業員やオペレーター自身が作業の手を止めて進捗を確認しなければなりませんでした。
▼
AFTER
刃先の位置や目標形状をモニターに表示できるため、オペレーターや手元作業員による丁張・墨出しの確認を大幅に削減できます。これにより施工を止めずに正確な作業を行え、従来よりも短期間で仕上げられます。
省人化
BEFORE
従来の施工では、丁張や墨出しの段取りに作業員が必要で、オペレーターを補助する手元作業員や、積込を記録する作業員も必要でした。つまり、作業の多くを人力に依存せざるを得なかったのです。
▼
AFTER
目標形状や刃先の位置が常にモニターに表示されるため、従来のように丁張や墨出しを細かく設置・確認する必要が大幅に削減されます。さらに、ペイロードメータ機能によって積込み時の重量が自動で計量・記録されるため、手書きや人による記録作業をほとんど行わずに済みます。
安全性向上
BEFORE
従来の施工では、手元作業員が建設機械のすぐそばで作業することが多く、その結果、建設機械との接触事故が発生するリスクが非常に高くなっていました。
▼
AFTER
省人化により建設機械の周囲で作業する人が減り、現場の安全性が向上します。さらに、万が一人や物が建設機械の周囲に入った場合でも、衝突検知ブレーキシステムが自動で作業を停止し、事故を未然に防ぎます。
ICT建機のもう一つの大きな価値は、施工中にさまざまなデータを自動的に記録できる点にあります。たとえば「どこでどれだけ掘削したか」「どのダンプに、どれだけ積み込んだか」といった情報を、稼働のたびに自動で記録してくれるのです。つまり、ICT建機は「施工を支援する機械」であると同時に、「データを収集する機械」でもあります。
どこでどれだけ掘削したか
建設機械に付いているIMUセンターから刃先、ブレード、車体の動きを読み取り、3次元座標を持った「施工履歴データ」を自動生成します。
どのダンプに、どれだけ積み込んだか
積み込み作業中の油圧やアームの動き、傾きなどをセンサーで常時取得し、油圧ショベルではバケットに積載した重量を自動で計量・記録できます。このバケット積載量を計量する機能は「ペイロードメーター」と呼ばれます。
今やICT建機は、ただの操作支援ツールではありません。施工中に価値あるデータを蓄積し続ける、いわば「施工情報の収集ツール」です。
そして、そのデータを活かすかが重要です。言い換えれば、ICT建機の本当の価値は、「データをどう使うか」にかかっているのです。ICT建機のデータを使いこなせれば、すべての現場で利用できるツールになります。
「で、これを使うとどんな価値があるの?」「現場でどう使えるの?」と思われた皆様、
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にて、ICT建機のデータが施工にどのように付加価値を生み出すのかをご紹介します。
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