土木工事のコスト削減を実現するデータ活用とは?

2026
07
31

はじめに

建設現場では、ICT建機やデジタル技術の活用が少しずつ広がっています。一方で、実際に導入を検討する際には、「従来の施工と比べて、本当にどれくらい生産性が向上するのか?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
Smart Construction®では、建設機械やダンプトラック(以下、ダンプ)から取得できるデータを活用することで、積み込み量の把握や運搬計画の最適化、車両の運行状況の可視化など、施工全体の改善につなげることができます。
そこで今回、実際の河川工事を対象に、従来の施工方法とSmart Construction®を活用したデータに基づく施工を比較。施工量・作業時間・費用にどのような違いが生まれるのかを検証しました。

本記事では、その検証結果をもとに、データ活用によって施工現場がどのように変わるのかをご紹介します。

Smart Construction®とは

建設生産プロセスの全工程を3Dでつなぎ、工事前の地形から完成地形までを、より速く、より少ない人員で、安全でクリーンに実現する新しい施工手法です。

検証したのは、約2万m³の土を運ぶ河川工事

今回の検証にご協力いただいたのは、福島県の株式会社福田組様です。対象となった「夏井川河床掘削他工事」は、河川の中にたまった土を掘り、ダンプで運ぶ工事です。

項目 内容
検証協力株式会社福田組(福島県)/代表取締役 福田 耕司 様
対象工事夏井川河床掘削他工事
工事内容河川内の土の掘削・運搬
掘削する土の量約20,000m³(10トンダンプ約3,000台分)
運搬距離約19km
夏井川河床掘削他工事の施工ヤード
施工ヤードの様子。河川内の土砂を掘削し、ダンプで運搬する工事を対象に検証しました。

現場で見つかった、4つの困りごと

今回の検証は、デジタル機器の導入から着手したわけではありません。まず現場を観察し、どの作業に時間がかかっているのか、どこで待ちが生じているのかを洗い出しました。その結果、改善の余地がある作業が4つ見つかりました。ここからは、4つの困りごとをどのように解決したのかを順にご紹介します。

❶ ダンプに「どこまで積めるか」が分かりにくい

これまでは、オペレーターが目で見て「このくらいでいいだろう」と判断することがありました。少なすぎると一度に運べる土が減り、多すぎると決められた重量を超えるおそれがあります。

解決方法:ショベルがダンプに積んだ量を数字で確認します。この仕組みを「ペイロード」と呼びます。簡単に言えば、「今、どれくらい積んだのかを数字で見る機能」です。
積み込み改善の検証結果グラフ
積み込み量を目で判断した場合と、数値を確認しながら積み込んだ場合の比較。
これまで

目で見て積み込む:5.6m³

オペレーターの感覚で判断するため、1台ごとに積込量のばらつきが出やすくなります。

データ活用後

数字を確認して積み込む:6.9m³

積んだ量を確認しながら作業するため、積みすぎを避けつつ積載量を引き上げられます。

ダンプ1台当たりでは1.3m³増え、積込量は23%向上しました。積みすぎを避けながら、積める分をしっかり積むための判断材料になります。

❷ ダンプを何台用意すればいいのか分からない

ダンプが少なすぎるとショベルが待ち、多すぎるとダンプが順番待ちになります。必要な台数は、運ぶ距離や積む時間、走る道によって変わります。

解決方法:工事を始める前に条件を入れて、何台なら効率よく仕事ができるかを計算します。この計算に使ったのがSmart Construction Simulationです。言い換えると、「ダンプを何台使うと効率がよいかを事前に考えるサービス」です。
ダンプ台数ごとの施工量とショベル稼働割合のシミュレーション
ダンプ台数を変えたときの施工量と、ショベルが積み込みに使う時間の割合を比較した図。
当初想定

ダンプ12台:1日420m³

経験にもとづいて決めた台数です。ショベルの手待ちが発生しやすい条件でした。

計算結果

ダンプ15台:1日511m³

計算上は約22%向上する結果となりました。

❸ 紙に書いて、集めて、パソコンに入力する作業を減らしたい

ダンプが何回土を運んだのかを紙で管理すると、「配る → 書く → 集める → パソコンへ入力する」という作業が毎日発生します。

解決方法:ダンプの位置情報を使い、運行の記録を自動で残します。この運行管理に使ったのがSmart Construction Fleetです。簡単に言えば、「ダンプがどこを走っているのかを地図で確認し、運行記録にも使えるサービス」です。
建機の運転席でスマートフォンの地図を確認している様子
建機の運転席からスマートフォンで位置情報を確認している様子。
紙書類による運行記録とデジタル運行記録の工数比較
紙での運行記録と、位置情報を使った記録の作業時間を比較した図。
これまで

紙による作業:133分/日

用紙の配布、記入、回収、パソコンへの入力までを毎日繰り返します。

データ活用後

位置情報を使った場合:35分/日

運行の記録が自動で残るため、集計と確認が中心の作業になります。

条件に基づく計算では、書類作業を74%削減できる結果でした。

❹ 「次のダンプはいつ来る?」が分からない

次のダンプがいつ戻るか分からないと、早く準備しすぎて機械を待たせたり、逆に準備が遅れてダンプを待たせたりします。

解決方法:ショベルのオペレーターがダンプの現在位置を見て、「今ここまで来ているから、そろそろ準備を始めよう」と判断できるようにします。
油圧ショベルの運転席で位置情報を確認するオペレーター
Smart Construction Fleetの位置情報を、作業の段取りを決める材料として活用します。
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積込量と運搬回数の改善を組み合わせると、1日に運べる土の量はどうなる?

積む量を増やすことと、1日に運べる回数を増やすことを組み合わせて、施工全体への効果を計算しました。

従来施工とデータを活用した施工の生産性比較
積込量と運搬回数を組み合わせた施工量・施工日数の試算。
従来

336m³/日・推定60日

目視での積み込みと、当初想定のダンプ台数による施工です。

データ活用後の試算

約504m³/日・推定40日

積込量の向上と運搬回数の増加を組み合わせた場合の計算結果です。

1日当たりの施工量は49%向上し、20,000m³を施工する場合の必要日数は60日から40日になる計算です。

ダンプを増やしたのに、なぜ費用が安くなるのか?

1日当たりに使うダンプは増えますが、工事の日数そのものを短くできれば、工事全体の機械費を抑えられる可能性があります。

従来施工とデータ活用施工の機械費比較
施工日数短縮を前提にした機械費の試算。
従来計画

約3,180万円

ダンプ12台・60日で施工した場合の機械費です。

データ活用後の試算

約2,600万円

ダンプ15台・40日で施工した場合の機械費です。

差額は約580万円です。考え方は「1日の費用を安くする」のではなく、「工事全体を早く終わらせて、総費用を減らす」というものです。

検証で得られた結果

積込量

23%向上

ダンプ1台当たりの積込量が5.6m³から6.9m³へ。現場での実測値です。

書類作業

74%削減

運行記録にかかる時間が1日133分から35分へ。条件に基づく試算です。

日当たり施工量

49%向上

1日336m³から約504m³へ。実測値とシミュレーションを組み合わせた計算結果です。

機械費

約580万円削減

工期短縮を前提とした試算です。1日の単価ではなく、工事全体の費用で比較しています。

目的は、難しいデジタル技術を使うことではない

今回使ったSmart Construction®は、現場の仕事を数字で確認し、次の日・次の工事のやり方を良くするための道具です。計画から改善までを繰り返していく流れのなかで使います。

データを使った施工改善の流れ
計画、施工、確認、改善を繰り返していく考え方。製品名よりも、「何を良くしたいか」が出発点です。

Smart Construction SimulationSmart Construction Fleetは、この流れを支えるサービスです。製品を使うこと自体が目的ではなく、現場の困りごとを解決することが目的です。

データがあっても、現場の経験は必要

雨、現場の状態、人員の確保など、工事は計算どおりに進むとは限りません。データが経験に代わるのではなく、経験にもう一つの判断材料を加える考え方です。

現場でスマートフォンを確認する誘導員
現場でデータを確認する様子。データと現場の判断を組み合わせて使います。
経験だけ → 経験+データへ。「いつものやり方」に数字を加えることで、改善できる場所を見つけやすくします。
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