
土木工事のコスト削減には、運行管理や施工データの可視化が欠かせません。本記事では実際の建設現場で実施した検証結果をもとに、過積載防止、施工計画の最適化、書類業務の効率化など、生産性向上につながるデータ活用の方法をご紹介します。
「ダンプトラックは何台配置すれば最も効率が良いのだろうか。」「書類作成に毎日多くの時間を取られている。」「過積載を防ぎながら積載量を増やしたい。」このような課題は、多くの建設現場で共通しています。
建設業界では慢性的な人手不足や技能者の高齢化に加え、働き方改革への対応も求められており、限られた人員でより高い生産性を実現することが重要になっています。一方で、ICT建機やGNSSなどのデジタルツールは普及してきたものの、「取得したデータをどのように施工改善へ活用すればよいのか分からない」という現場も少なくありません。
そこでEARTHBRAINでは、実際の河川工事を対象に、施工データを活用した改善効果を検証しました。その結果、日当たり施工量49%向上・書類業務74%削減・機械費用約580万円削減といった効果が確認されています。
これらの結果は、データを「取得する」だけでなく、「現場改善に活用する」ことで大きな効果が得られることを示しています。本記事では、実際の検証内容をもとに、建設現場におけるデータ活用がどのようにコスト削減、生産性向上、施工の最適化につながるのかをご紹介します。
建設現場では、多くの工程が複雑に関係しています。例えばダンプトラックの台数が不足すればショベルは待機時間が発生し、逆に台数が多すぎればダンプが滞留します。積み込み量が少なければ運搬効率が低下し、多すぎれば過積載となり法令違反につながる可能性があります。さらに、紙による運行記録・手書きの日報・経験に依存した施工計画・運行状況が見えないことによる待機時間の増加など、日々の業務の中には目に見えにくいロスが数多く存在しています。
これらの課題は、一つひとつを見ると小さく感じられるかもしれません。しかし積み重なることで、施工期間の長期化や機械稼働率の低下、人件費・機械費の増加につながります。つまり、本当のコスト削減を実現するためには、現場全体をデータで可視化し、施工プロセスそのものを最適化することが重要なのです。
現場ヒアリングや工程分析を実施した結果、生産性向上を妨げる主な要因として4つの課題が抽出されました。従来はオペレーターの経験や感覚で積み込みを行うケースが多く見られます。
最初に検証したのは、積み込み作業の改善です。従来はオペレーターが目視で積載量を判断していました。一方、データ活用では建機のペイロードモニターを確認しながら積み込みを実施しました。その結果、平均積載率:79.9% → 98.3%・平均積載量:5.6㎥ → 6.9㎥・となり、ダンプ1台当たりの施工量は約23%向上しました。さらに、積載重量を正確に把握できるため、過積載を防止しながら効率的な運搬を実現できます。これは単なる施工量の増加だけではなく、安全性や法令遵守にもつながる重要な改善と言えるでしょう。
建設現場では、ダンプトラックの配車計画を経験や過去の実績をもとに決定するケースが少なくありません。しかし、現場ごとに運搬距離や道路状況、積込時間などの条件は異なるため、「前回と同じ台数」が必ずしも最適とは限りません。今回の検証では、運搬シミュレーションを活用し、積込時間や運搬距離、走行ルートなどのデータをもとに最適なダンプ台数を算出しました。従来計画では12台で運搬する想定でしたが、シミュレーションの結果、ショベルの稼働率を60〜70%に維持するためには15台が最適という結果が得られました。その結果、日当たり施工量:420㎥ → 511㎥・施工量:約22%向上という試算となりました。施工計画を「経験」ではなく「データ」に基づいて立案することで、建機やダンプの待機時間を減らし、機械をより効率的に活用できることが期待できます。
施工現場では、ダンプの運搬実績や周回記録、日報作成など、多くの管理業務が発生します。紙による管理では、周回表の配布・ドライバーによる記入・回収・Excelへの転記・帳票作成といった作業が必要となり、担当者に大きな負担がかかります。そこで、ダンプに位置情報端末を設置し、運行データを自動取得する仕組みを導入しました。運搬履歴をリアルタイムで記録し、そのまま帳票データとして活用できるため、入力作業を大幅に削減できます。検証では、従来:133分/日・デジタル化後:35分/日・となり、約74%の工数削減を実現しました。施工期間全体で見ると、書類業務は約80%削減できる試算となっており、現場監督が本来注力すべき品質管理や安全管理に時間を充てられる環境づくりにつながります。
今回の検証では、複数の改善施策を組み合わせることで、大きな成果が確認されました。特に注目すべきなのは、「コスト削減」と「生産性向上」を同時に実現できた点です。一般的に、施工量を増やすためには建機やダンプを追加し、コストも増加すると考えられがちです。しかし、今回の検証では施工計画を最適化したことで工期そのものが短縮され、結果として機械費用全体を約18%削減できるという試算になりました。つまり、データ活用は単なる業務効率化ではなく、現場全体の収益性向上にも直結する取り組みといえます。

